■ フレットバイオリンの特徴と効果
普通のバイオリンとフレットバイオリンの比較

■ 効果
フレットバイオリンのパフォーマンス

上のグラフは、「バイオリンを初めて触った人」がフレットバイオリンを弾いたときの感想です。
簡単に言うと、思っていた通り弾けた! いや、それ以上に弾けた! という人が75%で、弾けなかった…と、ネガティブな回答をした人は15%です。2000人に迫る数の感想データなのでかなり信頼できるのではないでしょうか? 

もしフレットのない普通のバイオリンで同じデータをとったらどうなるか? 比較実験を試みましたが、測定不能でした。なぜなら、フレットがないと曲どころか音階すら弾けないので、単に「こすったら音が出た」だけで終わってしまい、「弾いてみよう」という企画が全く成立しなかったためです(苦笑いとともに去っていく…)。

フレットバイオリンがどういう楽器か端的にデータで説明してみました。

■ エルデ楽器製のフレットバイオリンは他と違うの?
エルデ楽器のフレットバイオリン
エルデ楽器のフレットバイオリンの特徴のひとつは、18フレットというハイポジションまで、しっかりフレットが入っていることです。よく、バイオリンの高いポジションのフレットは、間隔が狭すぎるので使えないという人がいますが、これは間違いです。フレットがなくても弾ける人が、「こんな狭い間隔のフレットなら、無い方が弾きやすい」と、自分の感覚で判断しているにすぎません。実際は、初心者がハイポジションの音程と指の位置を覚えるのに、フレットは非常によい手がかりになります。

ハイフレットにフレットがないフレットバイオリンがあるとすれば、それは、普通のバイオリンのネックに、直接フレットを打ち込んで作った簡易的な楽器かもしれません。もともとフレットを打つことを想定していない普通のバイオリンのネックは、たくさんのフレットを打てるほどの強度がなく、無理をするとネックが曲がってしまうため、低いポジションまでしかフレットを入れられないのです。その点、エルデ楽器のフレットバイオリンは、ネックごとデザインされているため18フレットまでしっかりハイポジションに対応しています。

なお、『フレットバイオリン』はエルデ楽器の登録商標(第5719397号)です。
■ 普通のバイオリンと音は違うの?
フレットバイオリンは、普通のバイオリンと同じ音が出ます。
同じ音がします。

音を出す構造(弦を弓でこすって音を出し、それを楽器のボディで響かせる仕組み)自体は全く同じなので、全く同じ音が出ます。

―― 非常に厳密に言えば、柔らかい指ではなく、金属のフレットで弦を押さえることになるため、少しだけよく響くようになります。

■ 新しい創作楽器なの?
フレットバイオリンは中世の古楽器がルーツです。
実は中世ヨーロッパの古楽器がルーツにあります。

15世紀前後のルネサンス〜バロック時代には、フレットの付いた擦弦楽器『ヴィオール』が盛んに使われていました。エルデ楽器のフレットバイオリンは、このヴィオールを現在の素材と技術で復興した楽器と言えます。

また、現在は、アメリカにもバイオリンにフレットを取り付けるメーカーがいくつかあり、フレット付きバイオリン(fretted violin)を販売しています。

日本では、エルデ楽器が国内唯一の専門工房として、独自のデザインで精密かつ廉価なフレットバイオリンを制作しています。

■ フレットがあるとバイオリンらしい音がでない?
論より証拠。フレットバイオリンを使った演奏がこちらです。

バイオリン経験者の中には、フレットが邪魔をして、ビブラートやグリッサンドができないというイメージを持たれる人が多いのですが、実際は普通のバイオリンと同様にビブラートもグリッサンドも演奏できます。

よくよく考えると、他のフレット付き楽器(例えばギター)においても、ビブラートやグリッサンドはごく一般的に使われていますね。

※ ウエブサイト「violin freestyle」のokikageさんの許可を得て、「フレットバイオリンの試奏レビュー」という記事に使われていた動画を一部抜粋して掲載しています。

■ フレットバイオリンから始めると、普通のバイオリンも弾けるようになるの?
補助輪という考え方もできます
もちろん弾けるようになります。むしろ、大人からバイオリンを始める人にとっては、はじめにフレットバイオリンを使うのが上達の早道です。

バイオリンは最初のハードルがものすごく高い楽器です。高すぎる段差にフレットという一段を設けることで、スムーズにハードルを乗り越えられます。これだけでも上達スピードが格段に早まります。

あるいは、フレットは「自転車における補助輪」に例えてもよいでしょう。補助輪を使って自転車の乗り方を覚えれば、そのうち補助輪なしの自転車に乗ることができるようになります。

また、最初に説明した「楽しさを先取りして、曲を弾くところから始められる」というフレットバイオリンの特徴は、いわば「転びながら自転車の乗り方を練習する前に、サイクリングの楽しさを味わえる」ことと同じです。実はこの「楽しさの先取り」が上達の秘訣です。

楽しさの先取り

要はモチベーションの問題です。普通のバイオリンを使って、音程の狂った気持ちの悪い音を出していても、何も知らない小さな子供は気にせず練習を続けられます。しかし、私たち大人は、既にきれいなメロディや素晴らしい音楽を知っています。そのため、自分の出す酷い音にがっかりしますし、その状態が長く続けば挫折してしまいます。

私たち大人は、限られた趣味の時間をできるだけ有意義に楽しく使いたいのです。バイオリンを楽しく弾けるようになるまでに時間がかかりすぎるなら、バイオリンの修行からドロップアウトし、他の楽しみを優先させるでしょう。フレットバイオリンの最大の効果は、「楽しさの先取り」により、このドロップアウトのリスクを減らすことなのです。
 
■ フレットバイオリンならではの使い方ってあるの?
フレットバイオリンだからこそできる奏法もある
プロのバイオリニストによるフレットバイオリンの新しい使い方が広がっています。

プロユースとしては、バイオリンが本職ではないプロの音楽家(ギタリスト等)が、楽曲の録音にフレットバイオリンを購入するケースが多数あります。しかし、フレットバイオリンは、本来は「簡単に弾けるバイオリン」ではなく、普通のバイオリンとは「別の楽器」です。そこで、フレットバイオリンならではの特性を活かした新しい使い方が、主にプロのバイオリニストによって模索されてきました。

最近では、エレキ・フレットバイオリンとエフェクター(ルーパー等)を汲みあわせて、一人多重演奏をするパフォーマンスが人気です。このような多重演奏では、録音により何度もループするメロディには特に正確な音程が求められます(何度も音程の狂ったメロディがループすると台無しですよね)。そのため、プロのバイオリニストもフレットバイオリンを使います。写真は、中西俊博さんの6弦のエレキ・バイオリンに、エルデ楽器がフレットを取り付けピックアップを改造した楽器です。



例えばコード弾きやライトハンド奏法など、普通のバイオリンではあり得ない演奏でも、フレットバイオリンで試す価値があります。まだ誰もやったことがないことですから。貴方がもし旺盛な開拓者精神の持ち主なら、是非フレットバイオリンのオーナーになって、この楽器の新しい可能性を見出してみませんか?